=Details=
1920px × 1080px(HD H264) モーション:30fps・絵のコマ:10-15fps
製作画像枚数:2,844枚(png形式、コマごとの1枚絵ではなく、「背景」「前景」「キャラクター」「光の粒」などパーツごとに各コマ制作)
使用ソフト◎Adobe Photoshop2020(作画- Adobe CCのKyle Brushシリーズ(鉛筆・水彩)をカスタムして使用)、Adobe Premiere Pro(編集)、Adobe Illustrator(モーションテスト用のオブジェクト制作・スチル書き出し後の画像サイズ調整)
製作期間:2020年7月初頭(打ち合わせや概要決定)〜7月末(アイデアスケッチ、コンセプトアートと大まかなストーリーボード制作)〜9月中旬(テストムービー完成)〜10月16日(本制作完成)
音と歌詞から得た着想のほか、今回はメールによるテキストベースの打ち合わせで楽曲の生まれた背景やコンセプトをヒアリングし、それらをもとにアナログでスケッチを重ねました。キャラクターの佇まいや色合い、シーンの設定や全体のトーンをここで大まかに決めていきます。 描きながら新たなストーリー展開を思いつくこともあるので大切な作業です。
スケッチで世界観を作る行程と並行して、楽曲の流れに沿ったストーリーボードを制作します。ストーリーをどの順で伝えるのか、といったことはもちろん、何を見せて何を見せないのか、写実的な描写と抽象的な表現をどのくらい織り混ぜるのか、などのイメージをここで練っていきます。
この段階で、曲のタイトルでもある"Dew"(しずく)を、ストーリーとは別に視覚効果のテーマにするアイデアを思いつきました。そこで、光がしずくのように落ちたり、しぶきをあげたりするモーションを随所で使うことにしました。
ちなみにMVに登場する車のモデルは、トヨタのCynos(サイノス)という車で、その見た目の可愛さと、CMのキャッチコピー「友達以上、恋人未満」に心を掴まれ選びました。気になる方は検索してみてくださいね。
カット割は歌詞を印刷した紙に文字+コマで書いていきます(お見せできるほど整理されていないので画像は省略)。通しでカット割ができると、次はカットごとの静止画を音楽と合わせてテストムービーを制作します。これでほぼアングルや色調、シーンの転換方法といった細かいところまでが確定し、本制作に入ることができます。本制作中に「このパーツは不要だな」「これがあったほうがいいな」というものがあれば、随時足し引きを行います。こちらのテストムービーと右上の最終版では、描きこみの差や新たに足した動きなどがご覧いただけるかと思います。
本制作は全てPhotoshopとペンタブによるデジタル環境で作画しました。1つの画面を作る際には、背景+動くもの+その前景にあるもの、というセル画的な考え方でパーツごとに絵を重ねていきます。こちらの花火のシーンは、キャラクターが止まっている間も花火が動き続けるので、花火の火+階段に落ちる光+水面に反射する光などかなり多くの極小パーツを作る必要がありました。また、キャラクターが複雑な動きをする場合は本描きの前にラフでテストする行程が挟まります。
全てのカットが完成後、細かいタイミング合わせと全体の色調整をします。今回は少しだけ彩度を上げ、鈍い色味の箇所は黒を軽くして柔らかな雰囲気を強調する調整を行いました。
以上、今回のミュージックビデオ制作プロセスをご覧いただきました。これまでのアニメづくりではくっきりとした絵柄を描くことが多く、本作は水彩のタッチや余白を生かした画面作りに初めて挑戦した意欲作です。柔らかい印象の中にも、キャラクターたちの揺れる感情や冬の空気感がしっかり込められたかなと思います。あと、一部だけタッチを意図的に荒々しくしたり、仕掛けのあるシーン転換だったりと、おっ?となるポイントをちりばめましたので、ぜひ何度もご覧になってお楽しみください。
futarinoteの最新情報はこちらからどうぞ!